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《THE UNIVERSE 月曜日》文字起こしvol.2:松尾潔×吉岡正晴対談(2007年8月27日放送)vol.3

KC「ダニ・ハザウェイの「スーパーウーマン」、そして、その作者でありますスティーヴィー・ワンダーの「アンティル・ユー・カムバック・トゥ・ミー(ザッツ・ワット・アイム・ゴナ・ドゥ)」(『ルッキング・バック』所収。1977年発表、1967年録音)、2曲続けてお聴きいただきました」
吉「この曲は録音されたのは(19)67年くらいなんだけど……」
KC「ずっと発売されなかったんですよね」
吉「で、アレサ(・フランクリン)がこの曲を……」
KC「73年くらいでしたっけ?」
吉「そうですね、73年に録音して、大ヒットさせるんですね。でも、この曲って、スティーヴィーは最初、グラディス(・ナイト)に書いたらしいんですよ」
KC「そう言われてみるとグラディスっぽい感じですよね」
吉「ところが、どういう話し合いがあったのかはわからないけども、グラディスはスティーヴィーがアレサにこの曲をあげたことをすごい怒ったという……」
KC「怒るでしょそれは……」
吉「スティーヴィーも、まぁ、気軽に言ったんでしょうね。グラディスに「1曲書いてあげるよ〜」かなんかで。それで書いたのがいつの間にかアレサのとこの行っちゃったっていう」
KC「なにしろスティーヴィーは口約束ばかりでメモを残さない男だから!」
吉「スティーヴィーはメモを残さないんだ?そっか……スティーヴィーはディオンヌ・ワーウィック に会った時に、「あなたの今日の赤いドレスは素敵ですね」って言ったらしいんだよ」
KC「それが『ウーマン・イン・レッド』のパブリシティ・ネッサン(?)じゃないですかっていう……」
吉「アッハッハッハ、まぁ、そうなってたんですけどね」
KC「おもしろい男なんですよね、スティーヴィーは」
吉「タネを明かせば、その赤いドレスの話は、マネージャーがディオンヌが赤いドレスを着てるから、それを褒めろって言ったらしいんだけどね。で、スティーヴィーが初対面でそれを言って、ディオンヌがびっくりして腰を抜かすっていう……」
KC「スティーヴィーのその手の話だと、スティーヴィーがトイレに入って、横に居た人に「お前の方がデカいな」って言ったらしいですよ」
吉「アッハッハッハッハ。それもおもしろいね!」
KC「あとは、記者会見で「じゃあ、後ろの縞模様の人!」とか言ったって話がありますけどもね。これ、ぜんぶ実話なんですよね。都市伝説じゃなくて。彼はわりとそういう事で笑ってくれるのが好きみたいですよ」
吉「そうね……スティーヴィーはよく、色んな映画観てますもんね」
KC「えっ、そうなんですか?!」
吉「そうなんですよ」
KC「へ〜、音で楽しむんですかね?ダテにサントラたくさんやってないですね!」
吉「うーん、というか、要は映画の話をしたときに、「あの映画は〜」って言うんだよね、普通に。「アイ・ソー・ザット・ムーヴィー」みたいな」
KC「アッハッハッハッハ」
吉「でね、そんなこと言うんだけど、要は、セリフは聞こえると。音も聴こえて」
KC「ええ」
吉「それで、一緒に居る人がここはどういうシーンだとか簡単に説明するんだと思うんだけど、それは、たしかに映画を観たことになるじゃないですかね」
KC「そうですねぇ」
吉「その彼がサウンドトラックを作るということは、スクリプトを読むっていうか、まぁ、企画書を読んでストーリーを知って、どういう曲調で……っていうことで作っていく」
KC「なるほど」
吉「だって、スティーヴィー・ワンダーが映画のサウンドトラックを作るってこと自体がおかしいですもんね」
KC「すでにトリッキーですよね」
吉「彼はトリッキーなことをけっこうやってるから」
KC「96年くらいですかね……当事、ニューヨークのミッドタウンに「ソウル・カフェ」っていう名前の……ソウルフードみたいなのを出すレストランが出来たんですよ。で、マリック・ヨバっていう役者さんがそのオーナーのひとりだったんですけど、『ニューヨーク・アンダーカバー』っていうテレビシリーズあったでしょ?サントラも出てたりしてたけど。あれに出ていた黒人さんなんです」
吉「ええ」
KC「ぼく、そこに行ったんですよ。したら、たまさか、スティーヴィーが隣のテーブル居たんですよ。キース・ジョンとかいっしょに食事していて」
吉「なるほど」
KC「で、「あっ、スティーヴィーだ!」ってことで、食事中だから話しかけるのも失礼かなとは思ったら、やっぱり同じように「あっ、スティーヴィーだ!」って気づいたニューヨーク観光にやってきた黒人のおばちゃんがツカツカ2人で寄ってって、「写真いいですか?」って言ったんですよ。したら、マネージャーみたいな人がサッと出てきて「ちょっと今食事中なんですよ」みたいなことを言ってるんだけど……」
吉「お兄ちゃんですかね?」
KC「で、すかさずスティーヴィーが「フラッシュはやめてくれよ?」って言ったんだよ!」
吉「アッハッハッハッハ」
KC「ニヤニヤしながら言ってましたよ。おもしれースティーヴィー!!みたいなね」
吉「ハハハハハ。なるほどねぇ〜」
KC「彼の中では定番のジョークなんでしょうね」
吉「(笑いが止まらない)……いいですねぇ、その話。スティーヴィーもやるなぁ。彼は自分で車も運転するからね〜」
KC「お庭が広いんですか?」
吉「2年か3年前にオプラ・ウィンフリー・ショーに出たときに、スティーヴィーが車を運転するっていうシーンがあって……ホントかよ!っていう。まぁ、相当広くて、何にもないところで運転してましたけどね。あれ、危ないと思うんだよね……無免許だと思うんだよね。フフフフフ」
KC「アッハッハッハッハ。どこのステーツがそんな免許出すんですか」
吉「アッハッハッハッハ。出さないよねぇ」
KC「「ファン・デイ」っていう『ジャングル・フィーバー』のサントラに入ってる曲ありましたけど、あのPVは彼がドライブしてるっていう設定で……」
吉「そうだったっけ」
KC「それで「ファン・デイ」って……周りの人からすると「恐怖の日」ですよ!」
吉「アッハッハッハ。そうそう、レイ・チャールズもドライブするんじゃなかったっけ……でも、スティーヴィーは酒飲んで運転するなって歌ってるんですけど……」
KC「彼は酒飲まなくても「ドント・ドライブ」ですよね。オールウェイズに(笑)」
吉「ただ単純に「ドント・ドライブ」ですよね(笑)」

KC「とりあえずここで、前半は締めましょうか。区切りも良さそうだし」
吉「ハイ」
KC「それでは、重要なメッセージを」

Stevie Wonder / Looking Back

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ウーマン・イン・レッド

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ジャングル・フィーヴァー(紙ジャケット仕様)

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